演奏が冴えない理由、それは“楽譜の読み違え”かも?

前回は、ピアノの演奏(アウトプット)の質を高めるためには、楽譜を深く理解するための「インプット」が大切だとお話ししました。

「楽譜を読む」と聞くと、ただ音符をなぞるだけだと思っていませんか?それは、本をただ文字として読むだけで、内容を理解していない状態に似ています。

たとえば、難しい専門書を初めて読んだとき、文字は読めても内容が理解できないことがありますよね。それと同じで、音符を正しく弾けても、その曲の魅力を引き出すのは難しいのです。

 

音楽にも「文法」がある

本を深く理解するには、文法や語彙の知識が必要ですよね。音楽にも、曲を理解するための「文法」のようなものがあります。
それが、音楽理論です。

まずは、音楽を形作る3つの基本要素を見てみましょう。

🎵 メロディ(旋律) 一番耳に残る「主役」です。私たちが「この曲だ!」と認識する、音楽の「顔」とも言えます。

🎼 ハーモニー(和声) 複数の音が重なり合い、メロディに深みを与え、明るさ・切なさ・緊張感など、音楽に「色彩」をつくり出します。

🥁 リズム(律動) 音の長さや強弱、並び方によって生まれる「流れ」や「パターン」。心臓の鼓動のように、音楽の「土台」や「骨格」となり、曲に躍動感を与えます。

これらの要素が互いに影響し合い、結びつくことで一つの作品を作り上げています。

 

楽譜を「説明できる」ことが第一歩

これらは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、あなたが弾いている曲のメロディ、ハーモニー、リズムがそれぞれどんな特徴を持っているか、言葉で説明できるでしょうか?

例えば、まずはこんな風に考えてみてください。
・メロディは、なだらかな動き?それとも大きく飛び跳ねる?

・ハーモニーは、明るい響き?それとも暗く切ない?

・リズムは、規則正しい?それとも自由な感じ?

これらは、あくまで入り口にすぎません。 実際には、もっと細かく掘り下げていく必要がありますが、最初はこのようにざっくりと捉えるところからで構いません。
こうした要素を言葉で説明できるようになることが、楽譜を深く読み解くための第一歩です。
まずは、言葉で説明することから始めてみましょう。

そして、その言葉が、ちゃんと自分の演奏にも反映されているか、ぜひチェックしてみてください。

 

音楽理論は「演奏のガイドブック」

ちなみに、譜読みのミスが多いのも、実は音楽理論の知識がないことが理由になっていることも多いです。
曲の形式や調性、和音などの知識があるのとないのとでは、譜読みの速さや正確さがかなり違ってきます。

音楽理論は「演奏のガイドブック」です。これらの知識が全くない状態で、勘だけを頼りに読み解くことはできません。

たとえば──

・音程を学べば、メロディの個性が見えてくる

・和音を知れば、曲の表情がつかめる

・拍子やリズムの構造を理解すれば、曲の流れに乗れる

以前、ある大学生の生徒さんが、楽譜を読み解く作業が「専門分野の洋書を読むことに似ている」と話してくれました。最初は大変だったけれど、少しずつ読み解いていくうちに、今まで見えなかった新しい発見や楽しさに気づけたそうです。

こうした知識は、あなたの演奏に説得力を持たせるだけでなく、楽譜を読む楽しさを教えてくれます。

「でも、音楽理論って難しそう…」と感じるかもしれません。しかし、学ぶためのテキストは、子供向けのドリルや、初心者向けの簡単な本からで十分です。
少しずつ知識を深めることで、これまで見過ごしていた楽譜の奥深さに気づき、あなたの演奏はきっと変わります。

たくさん練習しても「なぜか冴えない」と感じるときは、楽譜の読み方を見直すチャンスかもしれません。あなたの感じている「違和感」は、実は、楽譜がヒントをくれているのかもしれません。

 

次回は、「芸術や文化に触れること」が、どのようにピアノの楽しさにつながるのかについて、具体的な方法やヒントをご紹介します。

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