「うちの子、練習の仕方が雑で…」
保護者の方から本当によくご相談いただくお悩みですが、実はこれ、子どもだけでなく、ピアノを習うすべての人に共通する課題かもしれません。
「弾けていないのに、両手で通し練習ばかり」
「ゆっくり弾かず、いつも同じところで間違える」
「何度注意しても、ちゃんとした練習をしてくれない」
なぜ、私たちはきちんとした練習ができないのでしょうか?その原因についてお話ししたいと思います。
練習方法を知っていても、行動に移せない理由
丁寧に練習した方が上達することは、頭では分かっているはずです。レッスンで「片手練習」や「ゆっくり練習」が必要だと何度も言われているので、雑な練習のせいで上手く弾けないことも、理解していると思います。
では、なぜ行動に移せないのか?それは、「雑な練習でも、特に困らないから」ではないでしょうか。
上達するための練習は、はじめはとてもエネルギーを使います。その努力をしてまで「理想の演奏」に近づきたいという強い気持ちがないと、なかなか行動を変えることができません。
「上手くはなりたいけど、しんどい思いをしてまで上手くなりたい?」と聞かれると、気持ちがくじけてしまうのかもしれません。
実際、何年も練習方法が変わらなかった生徒さんが、ある日突然、意識が変わり、丁寧な練習ができるようになることがあります。
やはり、「今の演奏では嫌だ、変わりたい!」という強い思いが、行動を変えるきっかけになったのだと思います。
「怒る」ことは根本的な解決にならない
私自身も、生徒さんの気持ちはよく分かります。
私の場合は、弾けていないことで困っていなくても、先生や親にすごく怒られるので、言われた通りに練習するしかありませんでした。
でも、やはり自分の演奏に対する不満や、「もっと上手くなりたい」という気持ちが強くなってからの方が、練習の質は大きく変わりました。
本人の意志が変わらなければ、意味がありません。
「怒られない」ために練習するのではなく、「こうなりたい」という目標に近づくためのステップだと感じられるようになると、つらい練習にも充実感が生まれます。
保護者の方が練習に付き添う時期を過ぎたら、雑な練習を注意しても、親子でぶつかるだけであまり効果はないかもしれません。
もし、お子さんから「本当はもっと上手く弾きたいのに、ちゃんとした練習ができなくて…」と相談されたら、「どうすればいいか、一緒に考えようか」とぜひ話を聞いてあげてください。
焦らず、気長に見守ってあげてください。
レッスンでも、丁寧な練習の必要性については繰り返し伝えていますが、感情的に叱ることはありません。
幼児のお子さんの練習に付き添う場合も、「片手で弾いてみようか」「ゆっくり弾いてみようか」といった声かけをお願いしていますが、たとえその通りにできなくても、怒らずに、淡々と繰り返し声をかけてもらうだけで十分です。
丁寧な練習を身につけるまでの期間には、個人差があります。
聞いているようで聞いていないな…と思うこともありますが、あとで「ちゃんと聞いてくれてたんだな」と気づかされることも多々あります。
ピアノに向き合う時間以外でも、普段からさまざまな音楽に触れたり、感性を磨くことも大切です。
「自分の中に理想の音楽」が見つかると、練習への意識も変わっていくかもしれません。このことについては、また別の機会に詳しく書きたいと思います。